怠惰と決意の狭間で

布団は快適な睡眠と精神的充足を無条件に与えてくれる頼もしい味方だが、自分の中の怠惰を増幅させ、外の世界に対する開拓心を削ぐという点ではある意味敵でもある。

とはいえ、快楽と得る為の行為は少なからず依存性を持っている訳なので、悪いのは布団ではなくて、己の心の弱さにあるということは今更誰に言われるでもなく理解しているつもりだけど。


恐らく自分は本質的に他の人と比べて睡眠から得る快楽が大きいのではないかと思う。快楽というのは通常数値化出来ないものなので、自分の得ている快楽の量を量るなんて事はまずもって無理ではあるのだが、自分がインドア派だったりものぐさな性格だったりする理由は、睡眠に対するひとかたならぬ欲求にあるとしか思えないのだ。

「睡眠」という他者と同様の行為をしていながら、他者よりも多大な快楽を得ている訳なので、普通に考えればお得なのだが、現実問題はそんなに単純な話ではない。
睡眠を得る事に躍起になるあまりに外の世界への好奇心を失った自分は、もしかすると他の人たちと比べるとずっと狭い世界で暮らしていることになる。というか恐らくそうである。職場の同期は確か今日は旅行に出掛けると言っていた。自分は旅行に行く事はあまりない。面倒だし、家の中でのんびりしている方が楽だからだ。

ボクは大学生の頃から似たような生活を送っていて、いやしかし、社会人になれば生活リズムも改善されて自分もまっとうな週末を送ることが出来るようになるのではないか、と一縷の希望を抱いてはいたものの、まあ実際はこの通りである。自分の怠けっぷりが大学生という身分とか環境とかそういう外的要因によるのではなく、もっと根本的で本質的なモノなのだと気付いただけだった。
実際のところ、パソコンの前に座って文章を書く、という行為すらも面倒に感じることが多々あり、そういうときは「布団の中で横になりながら文章が書けるデバイスとかないかな」と考えたりする。
スマートフォンを使って書くというのが現実的に考えて最適解なのかもしれないけれど、真に勝手ながら、ボクはあまりフリック入力が好きではないのだ。得意でもない。まずスピードがキーボードよりも遅いし、指が擦れて痛くなってしまうので長文を書くのにはあまり向かないという印象だ。


快楽の話に戻るが、あまねく快楽というのは依存性と表裏一体なので、手放しで受け入れるのは危険だと思う。
ボクの場合、人よりも強いと思われる快楽が睡眠欲だったから良かったものの、これが食欲だったら多大な食費の出費や体調面での不安につながる思うし、性欲だったらよく分からんエロい店に貢ぐことになったり(中学生レベルの知識でごめんなさい)、あるいは性犯罪とかに関わるかもしれない。性犯罪を起こす人は恐らく生来的に常人よりも性欲が強い人だと思うので、そういう意味では性犯罪者自身も、快楽に捉われし憐れな犠牲者という訳だ。
これはあくまで快楽がもたらす負の面であって、快楽にはポジティブな要素も当然あるだろう。食欲旺盛な人は食に対する情熱から料理人になるかもしれない。それでなくても、食べるという行為でストレスを解消できているのだとしたら、それは大きなメリットだろう。性欲が強い人も、女性と交際したいが所以に自分を磨くことに余念がないかもしれない。外人とエロい事がしたくなって英語を覚えるというのは良く聞く話だが、エロに対する欲求というのは男を男らしくさせる最大のインセンティブだと思うのだ。


個人的には全体的に欲が少ない性格だと思っている。例外として、知的好奇心とか「物語」の消費欲求はかなり大きいほうかもしれない。けれどもこの2つは現在の社会においては安価で充足することが可能な欲求なので、あまりお金を必要としないで楽しく生活できるのが自分の強みなのかもしれない。


着地点を失ったのでこの辺で切り上げる。