「つまりは、人は人にしたがうのであって、理念や制度にしたがうのではないということかな」

 

銀河英雄伝説の魅力は、宇宙を舞台とした壮大な世界観と、そこで生きる人々の緻密な描写――つまりは戦争におけるミクロとマクロの両面を描ききっているところにあるのではないかと思う。

 

銀英伝は基本的には軍記物であり、先程挙げた例で言えば「マクロ」の視点から作品に向き合っていると思われるのだが、同時に、政治や戦争という舞台の上で踊るキャラクターにも丁寧にスポットライトを当てていて、「個人」と「戦争」の繋がりについて説得力を持って描いているのが素晴らしいと思う。

軍記物は、歴史を俯瞰視する性質上、歴史を構成する登場人物が駒のように描かれてしまうことが多いと思うのだが、こと銀英伝においては、登場人物が単なる駒として書かれていない。主役のみならず、脇役のひとりひとりに至るまで詳細な人物描写が為されており、結果的に、作品全体の世界観をより生々しい、リアルなモノにすることに成功していると思う。

 

個人的に一番好きな脇役はチュン・ウー・チェン。

民主主義の欠点を知りながらも、それでも自身の命を賭して民主主義国家の存続のために尽力した人物。

あっという間に出てきて、あっという間に死んでしまうキャラクターなのですが、自身の全てを賭して「理念」の為に死ぬその姿は、自分にとっては理想の死に様であり、とても感情移入できるキャラクターでした。

 

だれにも崇められることなく、自分以外の「なにか」の為に死ぬキャラ。

いやあ、こういうキャラに自分は弱いのだと最近気づいた。

 

有名所だとハリーポッターのスネイプ先生とか。

ACfAのマクシミリアン・テルミドールとか。

最近読んでいる「火刑戦記を掲げよ!」にもこういうキャラが出てきて感情移入してしまった。


火刑戦旗を掲げよ!

 

 

ボク自身、自分にあまり価値を感じていないので、価値があると感じたモノに対して献身的になりすぎてしまう傾向があるのかも、と自己分析。

 

 

読書カテゴリに入っているくせに全然書評とか書いていなかったので、たまにはこういう記事を書いてみた次第。